死んでいく妖怪の哀愁のある最期——『ゲゲゲの鬼太郎』第4期の魅力——

死んでいく妖怪の哀愁のある最期——『ゲゲゲの鬼太郎』第4期の魅力——

2020年6月30日

私が子どもの頃、
『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメシリーズは
第4期が放送されていた。
当時、兄が『ゲゲゲの鬼太郎』を好きだった影響もあって、
毎週のように観ていた。
子どもの私にとっては
怖さを感じる回もあったが
(特に、おどろおどろ、くびれ鬼の回は
夢に出てきた)、
私も『ゲゲゲの鬼太郎』に惹かれていた。

どこに惹かれていたかと言うと、
鬼太郎に倒されていく妖怪たちが、
必ずしも“悪い”と言い切れないところである。

『ゲゲゲの鬼太郎』は、
その妖怪が誕生した由縁など語るために、
妖怪の過去の回想シーンなどが
よく挿入される。
それを観ていると、
人間に害を与えている妖怪ではあるが、
子ども心ながらにも、
「この妖怪は本当に悪いのだろうか?」
と思ってしまうのだ。

私のオススメは、
第26話『復活!妖怪天邪鬼』である。
登場する天邪鬼(あまのじゃく)は、
シンプルに言うと
“怪力なわんぱくおじさん”である。
もちろん、天邪鬼と言うだけあって
少しひねくれてもいるが、
内面はいたって人間味のある
豪快な妖怪である。

500年もの間、巨大な石盤の下に
封印されていたが、
ねずみ男がその封印を解いてしまい、
天邪鬼は自由気ままに
シャバの生活を楽しみ始める。
文字通り“天邪鬼な”天邪鬼は、
金持ちの娘が鼻持ちならないとして、
誘拐し鬼太郎やねずみ男たちと共に
洞窟に閉じ込め、
人間の燻製を作ろうとする
(この時点で鬼太郎に倒されるのは
致し方ない)。

この洞窟内でのねずみ男と金持ち娘の
やり取りも何とも言えない
人情の奥深さがあるのだが、
それよりも印象的なのは、
天邪鬼の最期である。

洞窟を脱出した鬼太郎たちは、
天邪鬼を再び封印させるべく作戦を練り、
最終的にテコの原理で崖の上から
例の石盤を天邪鬼へ落とす。

天邪鬼の怪力さえも凌駕する重さの石盤
(だからその下に封印されていたのだが)
が頭上に降ってくるが、
天邪鬼はかろうじて両手で受け止める。
怪力で豪快だった天邪鬼から余裕は消え、
必死の形相で石盤の重さに耐える。

「こんなもの…!こんなもの…!」

『ゲゲゲの鬼太郎』第4期第26話『復活!妖怪天邪鬼』

死に物狂いの天邪鬼は
無情にも少しずつ石盤に押し潰されていく。

何とか生き抜こうと切羽詰まる天邪鬼と、
彼にのしかかっていく感情を持たない石盤。
その様子は人生そのもののようで、
石盤は“現実”のメタファーなのではないかと
思ってしまう。

それを観て、さっきまでは“悪者”だった天邪鬼に
強烈な哀愁を感じてしまうのだ。

「必死だな…。
なんせ500年も閉じ込められていたんだ。
必死にもなるよな…。」

『ゲゲゲの鬼太郎』第4期第26話『復活!妖怪天邪鬼』

天邪鬼の姿を見てそう言ったねずみ男も、
きっと哀愁を感じていたことだろう。
結局、天邪鬼は封印され話は幕を閉じるが、
「天邪鬼にも、天邪鬼の人生が
あったんだよな…」と
しんみりした気持ちになってしまうのだ。

これが、
『ゲゲゲの鬼太郎』第4期の魅力である。
鬼太郎の妖怪退治をただの
“勧善懲悪モノ”にしない。
その奥深さに、子どもながらに惹かれていた。
(エリートの回や朧車の回など、
他にも観賞者に問いかけてくるような話が多い。)

だからこそ、
『ゲゲゲの鬼太郎』第5期になったときに、
作品のテイストが“勧善懲悪モノ”に
なってしまっていて、
私としては少し残念であった。
“勧善懲悪モノ”は“分かりやすい”という点で
観賞者にストレスを与えないし、
大概ハッピーエンドで爽快な気分になるが、
私個人が『ゲゲゲの鬼太郎』にそういった
“分かりやすさ”や爽快感を
求めていなかったので、
「なんか『ゲゲゲの鬼太郎』じゃないな」
となってしまったのである。
(決して“勧善懲悪モノ”が嫌いな訳ではないし、
第5期にも好きな話はある。
ただ、私の『ゲゲゲの鬼太郎』像が幼少期に
完成してしまっていただけである。)

当時は
「今は分かりやすいオハナシが
ウケる時代か…」と
何だか物悲しくなったが、
そういった点で言えば、
『鬼滅の刃』がヒットしたことは驚きであり、
ちょっとした嬉しさもあった。

『鬼滅の刃』も、敵である鬼を
主人公の炭次郎が次々に倒していくが、
ほぼ毎回その鬼の回想シーンがある。
中には悲惨な人生を送ってきた鬼もいて、
「この鬼が鬼になってしまったのは
彼のせいではなのかもしれない…」という
同情と哀愁が押し寄せてくる。

そのような鬼の過去シーンは
『鬼滅の刃』の醍醐味であり、
そういった作品が
世間で広く受け入れられるとは
あまり思っていなかったが、
善悪という二元論では捉えきれない
人間の感情の揺れ動き、
人情の機微というものを作品として好む人は
たくさんいるのだといい意味で思い直した。

『鬼滅の刃』の過去回想シーンが好きな人は、
『ゲゲゲの鬼太郎』第4期も是非観てほしい。
きっと惹かれるであろう。

※画像は、『ゲゲゲの鬼太郎』第4期第26話『復活!妖怪天邪鬼』より引用