この戦争が終わったら、滅ぼしたい言葉があるんだ。

この戦争が終わったら、滅ぼしたい言葉があるんだ。

私は以前から“語彙力”という表現に違和感を感じる。
なぜなら語彙のバロメーターは
“強さ”ではなく“豊富さ”であるからだ。

“敵に与えるダメージの数値が高い”というのを
「攻撃力がある」と表現することと同じ論理で、
仮に“扱える言葉の数が多い”という観点から、
「語彙力がある」という表現をしているのだとしても、
語彙は何かを動かしたり破壊したりするといった、
エネルギーやパワーの部類ではないので、やはりしっくり来ない。

色鮮やかなパレットを見たとき、
“○○力”があるという表現を特に思いつかないのと同じように、
私にとっては語彙の豊富さを
“語彙力”と表現することには違和感があるのだ。

そもそも、世の中
“○○力”を使い過ぎではないだろうか?

こすり過ぎである。
“『鬼滅の刃』マーケット”並みにこすりまくっている。
『紅蓮花』は好きな曲なのに
店頭で聴きすぎて飽きてしまうではないか。

以下では私が“語彙力”と同等かそれ以上に
違和感を覚えるものを3つ紹介する。
すでに巷で議論があるものも含むが好き勝手に書き下ろしたい。

①“技術力”

「日本の技術力」など、
たまに見受けられる使い方である。
これはシンプルに、“力”が要らないと思うのだ。
「技術力がある」と
「技術がある」という表現に
意味の違いが生じるようには思えない。


“力”が強い弱いがあるのと同じで、
“技術”も高い低いがある。

だからわざわざ“技術力”なんて表現をしなくても、
技術の練度は表現できるのだ。

②“女子力”

このモンスターワードに比べれば、
“語彙力”や“技術力”などカワイイものである。
まず、“女子力”で表されるバロメーターが何なのかが、
そもそも曖昧である。

“語彙力”は語彙の豊富さ、
“技術力”は技術の高さを表現していることは、
違和感を持ちながらも理解はできる。

では“女子力”は何の強さや高さなのだろうか?

こういうことを述べると、
色々なことを言ってくる人がいる。
たとえば、

「なんだろうな、気配りができるとか…」

みたいに言う人がいるが、
当然気配りに性別は関係ない。
(いや、歴史上“気配り”を女性に求める
構造的な問題は存在するが、話が逸れるのでここでは割愛する。)

ヒドい事例は、

「いや、サラダを取り分けるとかさ…」

という返答である。

おい、いいか?
サラダを取り分けるのに必要な力は握力だぞ。

そして、“女子力”という言葉の根本的な問題は、
発言者の価値観を無意識に一般化する表現であるという点である。

自らが女性にどのような性質を求めるのかは勝手だろうが、
それを“女子力”と表現することで、
あたかもそれが“社会通念的に女性が備えるべき性質”
であるかのようにすり替わる。
そんな“女子力”という言葉を使って
一個人を「“女子力”がある/ない」と評価するのはなかなか横暴ではないだろうか。

まるでその人が女性としての価値がある/ないを評価するような発言である。

どの立ち位置からモノを言っている、となるのである。

もうこれ以上語らなくてよいだろう。

“女子力”という言葉は違和感の塊なのだ。

③“人間力”

なかなかのパワーワードではないだろうか。

人間としての力、である。

“女子力”と重なる部分もあるが、
私が言いたいことは1つで、

“人間力”という言葉をわざわざ使って何を表現したいの?

ということである。

人間に求められる力量や技量、
あるいは気質といったものは、
その個人の置かれた状況によって異なる。

それをある人の視点から
人間として求められる諸々を選別し、
それらを包括して“人間力”という言葉を使用するのは
表現としてガサツで暴力的ではないだろうか。

「”人間力”とは何か?」
みたいな書籍や研修がこの世には存在する
(現に私はそういった研修を受けたことがある)が、
それを定義してどうしようというのだろう。

そうではなくて、
「わが社の課長として求められることは~です」
とか、
「研究者に必要なことは××だ」
というような、
一定の社会的役割に対して求められる資質
についての話ならば了解できる。

ただそれを人間一般に拡大させるような表現に違和感を感じるのだ。

というか、あまりに暴力的なので、
この言葉を滅ぼしてほしい。

以上、○○力という表現について文句を言ってみたが、
私の言っていることは、
ともすると揚げ足取りに聞こえるかもしれない。

言葉に敏感になればなるほど、
普段は気にしないような表現が気になってしまうのだ。
違和感が生じてしまうのだ。

別にわざわざ揚げ足を取って騒ぎたいわけではないのだ。

そんなことを考え、
あぁ、損な性分だなと思いながら、
私はフライドチキンを食べるのである。