85点くらいの言い間違いをする先輩の話

85点くらいの言い間違いをする先輩の話

私の職場の先輩で”なんかいつも惜しい人”がいる。

本当に惜しいのだ。

「キミドリア君!なんか最近嫁がさぁ、
グリーンアップルティーみたいな
バンドにハマってるんだよね!!
知ってる??」

「あ、Mrs. GREEN APPLEですか?」

「そうそう!それそれ!知ってるのか!
やっぱ若いな!!ハハッ!」

ね?
惜しいのだ。
十分伝わるが、惜しいのだ。


Mrs. GREEN APPLEは世代の問題もあるので
取り立てて言うことでもないが、
たとえば先輩がファンである西武ライオンズの選手についても、

「今年はスパンジェーク(〇スパンジェンバーグ)が調子悪いなぁ…」

とか、

「モスバーガーはね、マックよりパンズがウマいんだよねぇ~!」

とか仰るのである。
きっと先輩はバンズ(buns:英)などという洒落た外来語はご存じなく、
ハンバーガーの上下にあるパンを複数形にしてパンズとしているのだろうが、
誠に残念ながらスペイン語であるpanは不可算名詞である。

仮に私がそれを指摘しても、おそらく

「そうなんだ!知らなっかった!
教えてくれてありがとう!」

と仰るような器の大きい方であるが、
先輩にティーチングプレイをすることなど気が引けるし、
なにより話の内容は十分に伝わるので

「分かります!おいしいですよね~!」

と私は何もなかったかのように話を合わせるのが常である。


だが一方で、言葉の細かいところを気にしてしまう私の脳内では、
いつまでも“パンズ”とかの間違いがリフレインして、
失礼にも笑ってしまいそうになる。

特に、惜しい言い間違いをした結果、
先輩が言いたかったものとは別物を表現してしまうケースは、
大概先輩の前で笑ってしまう。

たとえば、私が社用車を運転しているときに、

「高速道路乗る前に、ここでガソリン入れていいですか?」

とガソリンスタンドの前で訊いた際は

「OK!あれ、ここのガソスタはセルフィーかな?」

と仰ったことがあった。

セルフサービスか否か、ということを質問されたのだというのは分かるのだが、
なによりセルフィーとは“自撮り棒”のことなので、
笑って右折するタイミングを逃してしまった。

また、その帰り道でも、

「スマホ替えようと思うんだけどさぁ、
キミドリア君が使ってるグーグルピクシーってどうなの?」

と私のスマホを妖精に変えてしまった。

それで笑ってしまう私にも

「え!?あれピクセルなの?知らなかった!ハハッ!

とミッキーみたいに笑うだけの度量の大きさを持つ先輩なので、
また何か言い間違えないかなといつも期待している。